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AIを使った長編小説の現在地

馬場祐平です。

このページでは、「失敗者の告白」が「おそらく日本初・世界初」と言える根拠を書いています。

①なぜ作ったかの冒頭にその言葉を書きましたが、根拠の説明は分量があるので、独立したページにしました。


先行事例を調べてみた

「AI 長編小説」で検索すると、たとえば n8nとAIを使って設定資料を自動化し矛盾のない長編小説を書かせるアーキテクチャ設計(2025年12月)という記事が上位に出てきます。長編執筆の課題(コンテクストの漂流・設定矛盾)への真剣な取り組みであり、考え方には共通する部分もあります。

ただし、この記事の最後にはこう書いてあります——「次回、この設計図をもとに実際に書いてみます」。

その後も、関連する試みは続いています。

これら2本から見えてくるのは、AIを活用した小説創作が、AIの発達に合わせる形で圧倒的なスピードで進化している、ということです。「失敗者の告白」という長編ビジネス小説も、今回公開する方法論も、1年も経てば過去のものになるでしょう。それくらい進化は速いはずです。でも、だからこそ、最新の現在地を伝える意味はあると思って、あえて目障りな「日本初」という言葉を使いました。


何が日本初なのか

主張をより正確に絞り込むと、こうなります。

条件評価
AIを使って長編小説を書いた先行例あり
緻密な設計を元に、AI100%で長編小説を完成させた日本でも例はあるが玉石混交
緻密な設計を元に、AI100%で長編ビジネス小説を完成させたおそらく日本初・世界初

「長編ビジネス小説」というのは、エンターテイメントとしてのみ読むものではなく、意図的に設計された学びと物語が一体化したもののことです。この小説では、読者に何を学ばせるかが最初から意図的にデザインされており、実際にファイルにも落とし込まれています。どのシーンでどのビジネス概念を体感させるか、登場人物のどの行動がどの学習フレームワークに対応するかまで設計してある——そういう意味での「ビジネス小説」です。


このプロジェクトが実際にやったこと

  1. 執筆から推敲まで100%AIに任せ、実際に完成させた。 単発の章生成ではなく、28日間・23バージョンの全文改稿を経た全3部20万字の作品です。
  2. 「読み応えがある」クオリティを、実際に達成した。 初読者からの最初のフィードバックは「すごく面白かったです。自分の中にも同じような感情がある、って気づいて」でした。理論ではなく、完成した小説として人に届いたという事実です。
  3. 方法論をオープンにし、他者を巻き込んで創った。 日々のミーティング(ほぼ平日毎日)でフィードバックを収集し、即日反映するサイクルを回しました。さらに、本プロジェクトでは、GitHubでIssueやPRによる外部参加を歓迎するオープン型の制作体制をとっています。誰でも参加できる実験として、このドキュメントも含めて全部公開しています。

「AIが好きになれる小説かもしれない」

とある初読者の人はこう言いました——「AIが書いたのに、面白かったです。なんか……AIが好きになれる小説かもしれない。」

AIは一般に「人から仕事を奪う」「人をダメにする」ものとして扱われることが多いように想います。でも、コンピューターがそうだったように——かつてコンピューターで絵が描けるようになったとき、プロの画家は「絵のうまさはもういらない」という時代の変化を感じました——そのとき、コンピューターは人の自己表現を奪うのではなく、むしろ逆で、「絵を描ける人」が爆発的に増えました。

AIも同じことができると思っています。自己表現や自己実現のツールとして。「AIで感動させる」——それがこのプロジェクトの核にある動機です。

ビジネス小説という形を選んだのも、「自分の仕事や人間関係を考えること」ができる実利的な価値があるからです。「嫌われる勇気」のように物語で読めて学べる。そのジャンルで、ビジネスという文脈で、AIが100%書いた完成作品を世に出す。それがこのプロジェクトの位置づけです。


AIを使った小説創作に必須のツール

この小説の制作に使ったAIは、ブラウザでChatGPTにアクセスして入力する、といった使い方ではありません。MS社が作っている「VS Code」という、プログラマがよく使うエディター内で、最適なAIモデルを選択し、対話しながら小説を生成しています。AIにGitHub上のファイルまで一手に操作させながら、長時間の処理を、しかも複数同時並行で回し続ける——そういう環境です。モデルは主にClaudeの最新版。詳細は④AI長編小説の創作モデル⑤フォークして参加するに書いています。

なぜVS Codeが必要なのか。理由はシンプルで、バージョンを重ねるほどファイルが膨大になるからです。設定ファイル・プロット・原稿を合わせると、数十のファイルが常時存在します。バージョンが上がるたびに、それらのファイルがすべて新たに作成されます。AIが作品全体を見渡せる環境に置かないと、文脈の漂流が起きます。そして、AIが自律的に長時間動き続ける「Agentモード」や「Planモード」を使うためには、エディター上での実行が必要です。ブラウザのチャット画面では、これらは実現できません。

なお、使用モデルはプロジェクト途中で切り替えています。設計初期はGoogleのGemini3.0を中心に使っていましたが、Claude Opus 4.6がリリースされた段階でClaudeに移行しました。実際に原稿を書いてみると、小説の文章品質という点でClaudeに明確な優位性があったためです。現在(2026年3月時点)はGitHub Copilot Pro Plusプラン(月額39ドル)経由でClaudeを使うのが、コストと性能のバランスが最も良い選択肢だと思っています。

音楽や映像のクリエイターは、当たり前に最新のツールを取り込んでいます。小説家が昔ながらのエディタだけで執筆する時代は、もしかしたら、そう遠くない将来に変わるのかもしれません。